Higuchi – Tax News Vol.032 減価償却制度の見直し(200%定率法について)

 平成23年12月の税制改正により減価償却制度が見直しされました。平成24年4月1日以後取得される減価償却資産について、定率法で償却する場合、原則として250%定率法から200%定率法へ縮小されます。今回はこの200%定率法についてご紹介したいと思います。

 

1. 内容

 定率法の償却率を定額法の償却率の2倍として計算します。つまり、耐用年数10年の定額法の償却率は0.100となりますので、200%定率法の償却率は、2倍の0.200(=0.100×2)となります。なお、一定の事業年度以後は、残存年数による均等償却により償却します。

 

(例) 200%定率法による償却と250%定率法による償却の例

◆取得価額100万円(耐用年数10年)、200%定率法の償却率は0.200(改定償却率は0.250、保証率は0.06552)

 

 

◆取得価額100万円(耐用年数10年)、250%定率法の償却率は0.250(改定償却率は0.334、保証率は0.04448)

 

 

2.適用

 平成24年4月1日以後に取得した減価償却資産について適用となりますので、取得時期に応じて次のように償却方法が異なります。

①      平成19年3月31日以前に取得 → 旧定率法

②      平成19年4月1日から平成24年3月31日までの間に取得 → 250%定率法

③      平成24年4月1日以後に取得 → 200%定率法

 

3.経過措置

 この減価償却制度の改正により、改正事業年度(平成24年4月1日を含む事業年度)の減価償却費の計算は、250%定率法による償却と200%定率法による償却とが混在して、事務負担が増大しますので、次のような経過措置が設けられています。

 

  (1)      改正事業年度の平成24年4月1日以後の期間内に取得した減価償却資産の250%定率法の適用

 平成24年4月1日から改正事業年度の終了の日までに取得した減価償却資産については、平成24年3月31日以前に取得したものとみなして、250%定率法により償却することができます。なお、この経過措置の適用を受ける場合には届出等は不要です。

 

  (2)      平成19年4月1日から平成24年3月31日までの間に取得した減価償却資産の200%定率法の適用

 改正事業年度、又は改正事業年度の翌事業年度以後の償却費の計算について、平成19年4月1日から平成24年3月31日までの間に取得した減価償却資産の全てを、平成24年4月1日以後に取得したものとみなして、200%定率法により償却することができます。なお、この経過措置の適用を受ける場合には改正事業年度の確定申告書の提出期限までに一定の届出書を提出しなければなりません。

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Higuchi – Tax News Vol.031 復興所得税

 平成23年12月の税制改正により復興特別所得税が創設されました。

 こちらは、先の東日本大震災からの復興のための施策を実現するための財源を確保するためのものです。所得税だから個人にしか関係がないわけでなく、源泉徴収を行う法人にとっても重要な改正となります。

今回はこの復興特別所得税について紹介したいと思います。

 

 1. 個人所得の場合

(1)     納税義務者
 所得税を納める義務のある方が復興特別所得税を納める義務があります。

(2)     税額計算
 平成25年から平成49年までの各年分の所得税に係る基準所得税額に2.1%の税率を乗じて計算します。

 復興特別所得税=基準所得税額(原則として所得税額)×2.1%

(3)     申告・納付
 所得税の確定申告と合わせて、復興特別所得税の申告と納付も行います。
なお予定納税における予定納税基準額については、所得税と復興特別所得税の合計額が15万円以上である場合には予定納税の義務があります。

 

 2. 源泉徴収の場合

(1)     納税義務者
 所得税の源泉徴収義務者が、復興特別所得税の納税義務者となります。

(2)     税額計算
 平成25年1月1日から平成49年12月31日までの間に生ずる所得について源泉所得税を徴収する場合には、所得税と復興特別所得税(税率2.1%)を合わせて源泉徴収します。

したがって、預貯金や公社債利子、株式等の配当、講演料や原稿料など源泉所得税を徴収すべきものについて、すべて復興特別所得税が課税されることになります。

 なお、平成25年1月1日以降に支給する給与等から源泉徴収すべき所得税額・復興所得税額の合計額は、「源泉徴収税額表」により、また退職手当等から源泉徴収すべき所得税額・復興所得税額の合計額は、「退職所得の源泉徴収税額の速算表」により算出します。

(例)講演料として、手取り100,000円を支払う場合(所得税率10%)
100,000円÷(100%-10%-2.1%)=111,370.976円 → 111,370円(1円未満切捨) ⇒ 税込支払金額
111,370×(10%+2.1%)=11,370.877円 → 11,370円(1円未満切捨) ⇒ 所得税額・復興所得税額の合計額

(3)     納付
 源泉徴収した所得税と復興特別所得税は、その合計額を1枚の所得税徴収高計算書(納付書)により納付をします。

(4)     年末調整
 平成25年から平成49年までの各年分において年末調整をする際には、所得税と復興特別所得税の年末調整を合わせて行います。

 なお、平成24年分の年末調整により生じた超過額(年末調整還付金)は、平成25年1月に支払う給与等に係る源泉所得税・復興特別所得税から控除します。

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Higuchi – Tax News Vol.030 欠損金の繰越期間の延長と制限

平成23年12月の税制改正により法人の繰越欠損金についても改正されました。

 繰越期間が7年から9年に延長されることになり、また一定の法人については、欠損金の繰越控除の金額について所得金額の80%を限度として控除することになりました。

 今回はこの欠損金の繰越控除の改正について詳しく紹介したいと思います。

 

1. 欠損金の繰越期間の延長と制限

 (1) 欠損金の繰越期間の延長

 平成20年4月1日以後に終了した事業年度において生じた欠損金につき、青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越期間、青色申告書を提出しなかった事業年度の災害による損失金の繰越期間及び連結欠損金の繰越期間が7年から9年に延長されます。

 これは地方税である法人事業税の計算においても、同様の取り扱いとなります。

 

(2) 繰越控除の金額の制限

 ① 内容

 平成24年4月1日以後に開始する事業年度に生じた欠損金につき、青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除、青色申告書を提出しなかった事業年度の災害による損失金の繰越控除及び連結欠損金の繰越控除における控除限度額について、一定の中小法人等を除き、その繰越控除をする事業年度のその繰越控除前の所得金額の80%までに控除が制限されます。

 こちらも地方税である法人事業税の計算においても、同様の取り扱いとなります。

 

② 適用対象外法人

  ・普通法人のうち,資本金等の額が1億円以下である法人等

(資本金の額が5億円以上の法人による完全支配関係がある法人等を除く。)

 ・公益法人等又は協同組合等

 ・人格のない社団等

 

 (3) 3月決算法人による具体例

 

2. 帳簿の保存要件

欠 損金の生じた事業年度について確定申告書(青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除の場合は、青色申告である確定申告書)を提出し、かつ、その後 において連続して確定申告書を提出している場合で、欠損金の生じた事業年度に係る帳簿書類を保存している場合に限り、適用することになっています。

なお,法人税法上の帳簿書類の保存期間は従来どおり7年間とされていますが、欠損金が生じた事業年度についての帳簿は9年間保存となりますので、注意が必要です。

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