実は離婚をして「財産分与」したことにより、贈与税ではなく、譲渡所得税がかかる場合があります。
離婚した場合には、離婚した男女の一方が他方に対して、その財産の分与を請求することができます(民法768条)。これを「財産分与請求権」といいます。つまり、婚姻期間中に夫婦共同で形成した財産について、離婚時に財産を清算、要は夫婦それぞれ財産を分けることになります。
一般的には夫の方が経済力がありますので、仮にその夫婦が離婚した場合、妻は夫に対して「財産分与」を請求し、夫は財産を分け与えることになるわけです。
ここで「財産分与」を現金で行った場合には、譲渡所得税が課税されるということはありませんが、これが現金ではなく、自宅などの不動産や株式など現金以外の財産によって「財産分与」を行った場合、譲渡所得税が課税される場合があります。
例えば、ある夫婦が離婚し、夫の名義である自宅の全部を妻に対して「財産分与」したとしましょう。
このとき、夫としては財産分与として現金の代わりに自宅を妻に渡すことになるので、何も売却していないから譲渡所得税が課税されるのは変ではないか、と思われるかもしれません。
しかし税務上では、夫は財産分与を現金以外の資産である自宅で行っていることから、「財産分与請求権」を消滅させることにより経済的利益を受けている、と解釈します。
つまり、分かりやすく換言すると、財産分与するにあたり自宅を売却し、その売却代金自体を財産分与したとことと同じ、と考えているわけです。ということで財産の時価(売却代金)、イコール財産分与額となります。
したがって、上記の例ならば、2,000万円で購入した自宅を財産分与した場合、自宅の時価が3,000万円であれば、1,000万円の利益(譲渡所得)が生ずることになります。
ただし、自宅を財産分与した場合には「居住用財産の特別控除(3,000万円)」が適用されますので、税金はかかりません。(この特例は夫婦・親族に対する売却の場合には適用されないので、離婚後に自宅の財産分与を行う必要があります。)
※参考
所得税基本通達 33-1の4
(財産分与による資産の移転)
民法第768条《財産分与》(同法第749条及び第771条に おいて準用する場合を含む。)の規定による財産の分与として資産の移転があった場合には、その分与をした者は、その分与をした時においてその時の価額によ り当該資産を譲渡したこととなる。
(注)1 財産分与による資産の移転は、財産分与義務の消滅という経済的利益を対価とする譲渡であり、贈与ではないから、法第59条第1項《みなし譲渡課税》の規定は適用されない。
2 財産分与により取得した資産の取得費については、38-6参照
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