今年の1~2月頃の日経平均株価は1万円台でしたが、震災の影響により1万円台を割り、執筆時点では9,000円台に届かずといった具合です。
そんな状態であれば、法人で保有している上場株式についても含み損を抱えている銘柄も多く、その含み損を評価損として計上したいと思っている方も多いのではないでしょうか。
そこで今月は上場株式の評価損について紹介いたします。
1. 上場株式の評価損の計上について
税務上、資産の評価損については原則としてその評価損は損金の額に算入されませんが、長期保有で保有する上場株式等(企業支配株式を除く)については、以下の3つの要件をすべて満たした場合には評価損の損金算入が認められます。
① 事業年度終了の時における価額がその時の帳簿価額のおおむね50%相当額を下回ること
② 近い将来その価額の回復が見込まれないこと
③ 評価損として損金算入すること
税務上は以上の要件を設けていますが、中でも②の回復可能性の見込みについては、実務上明確な判断基準も判断基準と考えるべき材料もなく、どの程度回復が見込めなければ良いのか判断がつかない場合がほとんどでした。
しかしながら、平成21年4月3日に国税庁から「上場有価証券の評価損に関するQ&A(http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/joho-zeikaishaku/hojin/090400/index.htm)」が公表され、税務上の損金算入に関する取扱いの明確化及び周知が図られました。
2. 株価の回復可能性の判断基準について
上記「上場有価証券の評価損に関するQ&A」では、株価の回復可能性の判断基準について以下のように記載しています。
① 法人の側から、過去の市場価格の推移や市場環境の動向、発行法人の業況等を総合的に勘案した合理的な判断基準が示される限りにおいては、税務上その基準は尊重される。
② この合理的な判断基準として、専門性を有する第三者である証券アナリストなどによる個別銘柄別・業種別分析や業界動向に係る見通し、株式発行法人に関する企業情報などを用いて、当該株価が近い将来回復しないことについての根拠が提示されるのであれば、これらに基づく判断は合理的な判断であると認められる。
③ 監査法人による監査を受ける法人おいて、上場株式の事業年度末における株価が帳簿価額の50%相当額を下回る場合の株価の回復可能性の判断の基準として一定の形式基準を策定し、税効果会計等の観点から自社の監査を担当する監査法人から、この合理性についてチェックを受けて、これを継続的に使用するのであれば、税務上その基準に基づく損金算入の判断は合理的なものと認められる。
上記①にある法人が独自で行う「合理的な判断基準」とは、「事業年度末における株価が2期連続で50%相当額を下回っている」や「株式の発行会社が債務超過の状態にあり2期連続で損失を計上している」といったような客観的な数値に基づく判断基準が要求されると考えますので、その判断基準の是非や申告内容について予め顧問税理士等と打ち合わせをしておくことをお勧めいたします。
3. 株価の回復可能性の判断の時期について
損金算入して申告した後において株価が回復してしまった場合は是正する必要があるかどうか懸念されていましたが、この点も事業年度末時点において判断した内容については、その後において株価が回復したとしても是正の必要がなく、あくまで事業年度末において回復可能性を判断すればよいことが上記「上場有価証券の評価損に関するQ&A」に示されています。
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