役員や従業員が1年以上の予定で海外の支店などに勤務をする場合には、「非居住者」「居住者」のどちらかに該当するかによって日本での課税所得の範囲と課税方法が異なるので注意が必要です。
さらに、租税条約を締結している国との間では、租税条約が国内法に優先して適用されるため、租税条約の内容を確認することも重要になります。
1. 居住者と非居住者の給与に対する源泉徴収の取扱い
※ 居所とは「その人の生活の本拠(住所)ではないが、その人が現実に居住している場所」をいいます。
2. 出国に伴う取扱い
(1) 年末調整
日本を1年以上の予定で離れる場合には、日本を出国した日の翌日から日本の「非居住者」となりますので出国時に年末調整をする必要があります。
年末調整の対象となる給与は、出国の日までに支給された給与です。この場合の所得控除についての取り扱いは下記のように取扱われます。
◆ 社会保険料控除、生命保険料控除など
居住者であった期間(1月1日~出国の日)に支払った金額
◆ 扶養控除、配偶者控除、障害者控除など
出国の日の現況により控除対象となる者の控除額を控除
◆ 雑損控除、医療費控除、寄附金控除
適用を受ける場合は確定申告が必要
(2) 出国後の給与の取扱い
① 内国法人の役員の場合
海外勤務に対する給与には日本の所得税がかかり、20%の税率で源泉徴収が必要です。ただし、その役員が支店長など使用人の立場で常時勤務している場合には、源泉徴収の必要はありません。
② 従業員の場合
非居住者となった従業員の海外勤務に対する給与には、日本の所得税はかかりません。ただし、出国後に支払われる給与や賞与の計算期間内に日本で勤務した期間が含まれている場合には、日本での勤務期間に対応する金額に対して20%の税率で源泉徴収が必要です。
なお、給与等の計算期間が1か月以下であれば、その給与等の全額が日本での勤務に対応する場合を除いて、給与の計算期間のうちに日本での勤務期間が含まれていても源泉徴収の必要はありません。
3. 源泉徴収税額の納付
源泉徴収した所得税は原則として徴収した日の属する月の翌月10日までに納付しなければなりませんが、非居住者に対し国外において国内源泉所得を支払った場合に源泉徴収した所得税の納付期限は事務手続き等を考慮してその支払った月の翌月末日になります。
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