Higuchi – Tax News Vol.029 平成23年度法人税率の改正

 平成23年12月の税制改正により法人税率が改正されました。これは以前より経済界から要望があった法人税率の引き下げに対応したものとなります。

また平成24年4月1日より開始する事業年度から復興法人税が創設されました。これにより実効税率も変化しますので、注意が必要です。

 

1. 税率の改正

 改正後の税率は平成24年4月1日以後開始事業年度から適用になります。

※カッコ内の税率は、下記の復興特別法人税を加えた税率となります。

 

2. 復興特別法人税

 先の東日本大震災の復興に伴う財源の確保のため、法人が納税義務者である復興特別法人税が平成23年12月2日に公布・施行されました。

 

 (1) 適用対象事業年度

平成24年4月1日から平成27年3月31日までの期間内に最初に開始する事業年度開始の日から同日以後3年を経過する期間内の属する各事業年度

例えば、3月決算法人であれば、平成25年3月期から平成27年3月期が適用対象事業年度となります。

 

(2)    税率

基準法人税額×10%

基準法人税額とは、原則として法人税額から研究開発税制やグリーン投資減税などの政策税制による減税額を控除した残額となります。

 

 

(3)    留意点

この復興特別法人税は,法人住民税法人税割や事業税の課税標準には影響を及ぼしません。

 なお、利子・配当等に対して課される所得税に併せて復興特別所得税が課税されますので、その課税された復興特別所得税は、復興特別法人税から控除されます。

(復興特別所得税は平成25年1月1日より平成49年12月31日までに生ずる所得に対して課税されます。)

 

3. 実効税率

 

法人税率の引き下げや復興特別法人税により、実効税率は以下のように変わります。

※上記の実効税率は、東京都に本社がある資本金の額等1億円超の3月決算法人を前提としています。

 

【計算例】  平成24年4月1日から平成27年3月31日までの期間の実効税率の計算

 

No tags for this post.
カテゴリー: Higuchi - Tax News, 法人税, 税金 | コメントをどうぞ

Higuchi-Tax News 1月号 Vol.025 平成23年度税制改正②

平成23年度税制改正は、東日本大震災や、いわゆるねじれ国会の等の影響もあり、通常とは異なる複雑な経緯で改正がされております。
2回の改正のうち、今回は平成23年11月30日成立、12月2日公布された2つの改正法について、改正項目を列挙いたします。

なお紙面の都合上、すべての改正項目を記載しているわけではなく、また国税についての改正事項の記載のみとなっています。
(平成23年6月22日成立、6月30日公布された改正法については、Higuchi-Tax News 2011年7月号No.019を参照ください。)

 

1. 平成23年度税制改正の経緯

2. 国税通則法の改正事項

◆税務調査手続きの見直し

・税務調査の開始時に原則として事前通知を行う(明文化)
・税務調査の終了時点においても、更正、決定等をしない場合にはその旨を記した書面により通知(明文化)

 

◆更正の請求期限の延長
5年(贈与税は6年)

 

◆増額更正期間の延長
5年

(表省略 → 詳細はこちら)

 

3. 所得税の改正事項

◆復興特別所得税
原則として、所得税の額×2.1%   (平成25年~平成49年分の所得税)

 

◆定率法の償却率
定率法の償却率=定額法の償却率の200%   ※ただし、経過措置が設けられる

 

◆申告要件の規定がある制度の見直し
下記の規定は、申告要件を削除する
・給与所得者の特定支出制度の特例
・資産の譲渡代金が回収不能になった場合等の所得計算の特例
・純損失、雑損失の繰越控除
・外国税額控除 など

 

◆当初申告書の記載金額上限の見直し
下記の規定は、当初の申告書に記載した金額を上限とする措置を廃止する
・青色申告特別控除
・電子申告特別控除

(表省略 → 詳細はこちら )

 

4. 相続税・贈与税の改正事項

◆申告要件の規定がある制度の見直し

配偶者に対する相続税額の軽減の規定と贈与税の配偶者控除の規定は、申告要件を削除する

(表省略 → 詳細はこちら )

 

5. 法人税の改正事項

◆税率

普通法人=25.5%
中小法人等=19%(800万円以下は15%)
公益法人、協同組合等=19%(800万円以下は16%)

 

◆復興特別法人税

原則として、法人税の額×10%
(平成24年4月1日~平成27年3月31日までの期間内に最初に開始する事業年度から3年間)

 

◆定率法の償却率
定率法の償却率=定額法の償却率の200%   ※ただし、経過措置が設けられる

 

◆欠損金等の繰越控除金額
中小法人等以外の法人については、控除限度額は、控除前の所得金額×80%とする

 

◆繰越欠損金等の控除期間
繰越控除期間=9年

 

◆貸倒引当金制度の適用法人
中小法人や銀行・保険会社等に限定  ※上記以外の法人には経過措置あり

 

◆貸倒引当金の割増率
112%(公益法人等・協同組合等のみ)

 

◆一般寄付金の損金限度額
(資本金等の額×0.25%+所得金額×2.5%)×1/4

 

◆申告要件の規定がある制度の見直し
下記の規定は、申告要件を削除する
・受取配当等の益金不算入制度
・外国子会社から受ける配当等の益金不算入制度
・国、指定寄付金等の寄附金の損金算入制度
・所得税額控除、外国税額控除 など

 

◆当初申告書の記載金額上限の見直し
下記の規定は、当初の申告書に記載した金額を上限とする措置を廃止する
・試験研究を行った場合の特別税額控除
・中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は特別税額控除
・雇用者の数が増加した場合の特別税額控除 など

(表省略 → 詳細はこちら )

No tags for this post.
カテゴリー: Higuchi - Tax News, 国税一般(国税通則法), 所得税, 法人税, 相続税・贈与税, 税金 | コメントをどうぞ

Higuchi-Tax News 12月号 Vol.024 消費税95%ルールの見直し

平成23年度税制改正により、平成24年4月1日以後開始する課税期間から、その課税売上高が5億円を超える場合には、課税売上割合が95%以上であったとしても、課税仕入れに係る消費税額が全額控除できず、その消費税額の一部しか控除ができないことになります。

いわゆる「95%ルール」が適用できなくなりますので、事前に経理処理の見直しなどの対応が必要となりますから注意しましょう。

 

1. 消費税の計算方法

消費税の納付税額の計算は、課税売上げに係る消費税(仮受消費税等)から課税仕入れに係る消費税(仮払消費税等)を控除します。

この際に控除する課税仕入れに係る消費税を仕入控除税額といいます。

消費税の納付税額 = 課税売上げに係る消費税 - 課税仕入れに係る消費税(仕入控除税額)

 

2. 改正前の内容

簡易課税制度の適用を受けない場合の改正前の仕入税額控除の計算は、課税売上割合が95%以上のときは、課税仕入れに係る消費税の全額が控除できますが、課税売上割合が95%未満のときには、「個別対応方式」又は「一括比例配分方式」のいずれかによりに計算することになります。

 

(1) 課税売上割合

(2) 個別対応方式

その課税期間中の課税仕入れ等について、

①課税売上げにのみ係るもの、
②非課税売上げにのみに係るもの、
③課税売上げと非課税売上げに共通して係るもの、

に明確に区分されている場合には、以下の算式により計算した金額が仕入控除税額となります。

仕入控除税額 = ①に係る消費税額+(③に係る消費税額×課税売上割合)

(3) 一括比例配分方式

一括比例配分方式は、上記①~③に明確に区分されていない場合、又は個別対応方式が適用できる場合であっても一括比例配分方式を選択した場合に適用ができます。

この場合は以下の算式により計算した金額が仕入控除税額となります。

仕入控除税額 = 課税仕入れ等に係る消費税額×課税売上割合

なお、一括比例配分方式を選択した場合には、一括比例配分方式を2年間以上適用した後でなければ、個別対応方式に変更できません。

 

3. 改正後の内容

簡易課税制度の適用を受けない場合、平成24年4月1日以後開始する課税期間から、その課税期間の課税売上高が5億円を超えるときは、課税売上割合が95%以上であったとしても、仕入控除税額は「個別対応方式」又は「一括比例配分方式」のいずれかで計算しなければなりません。

No tags for this post.
カテゴリー: 消費税, 税金 | コメントをどうぞ